「…………ほえ?」
何で逃げ出したか、気付かない礼子。
どうしたのかと廊下に出ると、丁度外に停めてある車を急発進して出てくアニマル弟の姿と、それを走って追うスーツ姿の男が見えた。
え? 早。てかもうあんなとこまで。
まだ20秒も経ってない位なのに。
あの体型でこんな早く逃げるのは、ギネス級だろ。
まあ、それ程恐怖を感じたと言う事だ。
狙ってやっていない、いつものお騒がせ礼子の新喜劇。
しかし、この密室エドワード焼殺事件は、これだけでは留まらなかった。
同時刻。
アニマル兄は全ての視察を終え、校舎から車に戻ろうと外に出ようとしている。
一緒に視察に来ている弟には一声掛けてないが、わざわざ声を掛ける必要もないと言う兄弟の体裁があり、独断で帰ろうとしているのだ。
だが、一階の下駄箱に着いた辺りか?
マルチーズのラッシーが、いきなり手を離れて走り出した。
「あ、ラッシー!」
どこへ行くのかと、それ程慌てずにアニマル兄は適当に追った。
よくある事らしく、きっとこの校舎でまだ遊びたいんだなと、放しっぱなしの散歩のつもりで構えていた。
ラッシーは走る。
アホ面丸出しで、走る走る。
飼い主に似てか、舌丸出しでヨダレも垂らしながら、一直線に目的地まで向かった



