ザ・レイム(霊務5)


「…………ほえ?」










何で逃げ出したか、気付かない礼子。









どうしたのかと廊下に出ると、丁度外に停めてある車を急発進して出てくアニマル弟の姿と、それを走って追うスーツ姿の男が見えた。









え? 早。てかもうあんなとこまで。







まだ20秒も経ってない位なのに。






あの体型でこんな早く逃げるのは、ギネス級だろ。










まあ、それ程恐怖を感じたと言う事だ。









狙ってやっていない、いつものお騒がせ礼子の新喜劇。









しかし、この密室エドワード焼殺事件は、これだけでは留まらなかった。









同時刻。

アニマル兄は全ての視察を終え、校舎から車に戻ろうと外に出ようとしている。









一緒に視察に来ている弟には一声掛けてないが、わざわざ声を掛ける必要もないと言う兄弟の体裁があり、独断で帰ろうとしているのだ。








だが、一階の下駄箱に着いた辺りか?

マルチーズのラッシーが、いきなり手を離れて走り出した。









「あ、ラッシー!」









どこへ行くのかと、それ程慌てずにアニマル兄は適当に追った。










よくある事らしく、きっとこの校舎でまだ遊びたいんだなと、放しっぱなしの散歩のつもりで構えていた。










ラッシーは走る。









アホ面丸出しで、走る走る。










飼い主に似てか、舌丸出しでヨダレも垂らしながら、一直線に目的地まで向かった