「皆さん! 作戦変更じゃぞ!」
ヨネさんの一声で裏口を抑えて人が入れないようにしていた霊達は、一斉に正面玄関に向かった。
こちらの方は入り口が広過ぎる為、塞ぎようがないので脅かす作戦に移る。
ある霊達は、古びた大時計の裏に。
ある霊達は、放送室でゴソゴソと用意。
ある霊達は、窓の外で並んで待機している。
これから、一世一大の霊務が始まろうとしていた。
そして、ターゲットがゆっくり接近してきた……
「ヨネさん……近付いてきましたぜ。例のアニマル社長だ」
グラウンドを見ると、犬を抱っこしている小太りの男性と、黒いスーツを着た30代くらいの男性が、アチコチ方向を手で示して案内をしている。
この小太りの方が今回のゴルフ場を持つオーナー兼社長で、スーツの男性の方がゴルフ場建設の立案者で責任者役。
社長の方は毎度愛犬を抱き抱えての視察なので、アニマル社長と呼ばれている。
いつもはただ学校の周りをチラチラ見てただけであったが、今日初めて敷地内に入るのである。
愛犬マルチーズのラッシーは、特に校舎に違和感を感じずバカ丸出しの顔で尻尾を振っている。
単にこの霊達が情けない程霊力がないのか、はたまた犬の方がアホなのか、それはどちらか分からない。
どちらにしても多少なりとも吠えて、主人であるアニマル社長に恐怖心を植え付けさせてもらいたかった



