本人は、特に特別な感情を抱く相手がいない。
人間の心理として、自分には無い物や自分よりしっかりした人に惹かれるのが過半数を締めるが、雫よりしっかりとした人はそう滅多にいるものではない。
中には稀で、ダメな人程好きになると言う場合も見受けられるが、残念ながら雫はそれに該当しない。
それに人気が高くとも、相手方が勝手に瑞光な眼差しで見てくるものだから、誰一人として挑戦する者は居なかった。
誰かが告白すれば、焦って皆動き出すだろうが、未だそんな噂もないので、牽制した冷戦状態がひたすら続いている。
学生の本業は、勉強ではなく恋愛。
最近の時代はこのように変わりつつあるが、己を高める事に夢中な雫からしたら、学園の恋愛も親のお見合いも同じもの。
全く興味に該当しなかった。
「そろそろ、寝ようかな……」
時計の針は、11時を指している……
……が、それを振り向かずに寝る時間を思い立った雫。
普段から、規則正しい生活をしているのが窺える。
強制された規則ある生活でもないので、自然にこれが行える人間はごく僅か。
ストレスも感じず、体をしっかりと休められ、こうした習慣が秀才への頭脳や透き通った肌を作らせる。
まさに人間の手本だが、面白味がないのもこれまた事実。
自分でも、何か変わった面白い事がないかと少し考えつつ、布団の中で静かに目を閉じていった……



