極悪彼氏

あたしをコタローに会わせて、コタローがあたしを受け入れて?



それでコタローが変わったわけじゃない。



「ゲンさん、さっきのお礼、そこに…」

「もらっていいのか?」

「本当にありがとう」

「遠慮なくもらっとく」



さっき通り道にあった自販機で買ったジュース。



こんなもんでお礼ができたとは思ってないけど。



せめてもの思いで形にした。



「前もだけど、コタがこんなに無防備に寝てんのは珍しいな」

「無防備?」

「気配とかに敏感なヤツだから。この状況で寝てんのがレアだな」



そうなんだ…。



『落ち着く』



それだけで満たされる気がした。



誰も出来なかったことをあたしがやり遂げているような。



そんな感覚に陥ってしまう。



「あたし授業に出たいんだけど…」

「少し寝かせてやれ。ひとりでいても熟睡できねぇヤツだから」



それはどうして?



なんて聞けるほど、あたしとゲンさんの仲は深くない。



今はただ眠るコタローが悪夢を見ないことを願った。