ー1年前ー
「お母さん!早くしないと遅れちゃうよ!」
「待ってよお!もう少しで終わるから!」
アタシは今日お母さんと一緒に
大事な場所へ出かける。
「お母さん!お父さんにもらったネックレス知らない?!」
朝から家の中は大忙し。
それでもお母さんは相変わらずのんびりメイクをしている。
アタシは西田陽菜。
明倫高校の普通科1年。
「お父さん、行ってくるね。」
アタシは静かにささやいた。
30分後家を出た。
お母さんは寄らなければいけないところがあるらしく
先にいっててといわれた。
電車で1時間20分。
そのあとバスで30分のところにある所についた。
そこは海の匂いが強くて
どこか懐かしい気がする。
「昔はよくおばあちゃんに連れてきてもらったっけ…」
近くに小さな砂浜があって
地元の人しか知らないような港がある。
「お父さん、アタシねこないだのテスト学年2位だったよ」
波の音が
すべてを飲み込んでしまうぐらい大きく
風があたりを強く吹きあらしてる。
「遅れちゃった!ごめんね、待った?」
お母さんがやってきた。
手には黄色いガーベラの花束が抱えられている。
「遅いよ、どれだけかかるの。」
まだ4月で肌寒く
1人で港にいるのはとても心細かった。
「お父さんがプロポーズの時にくれた花を贈りたいじゃない…」
お母さんは静かにしゃがんだ。
「…早いわねえ…お父さんが亡くなってもう5年よ…」
アタシは静かにお父さんの墓に手を合わせた。

