――風。風が頬を撫でる。
秋の風はひんやりとしていて心地がいい。


私は携帯片手に廃ビルの屋上に立っていた。
真っ黒な背景の中毒々しく浮かび上がる真っ赤な文字は、私の死を優しく誘っていた。私は光を無くした目で、その誘いを再度確認する。


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The殺サィトへようこそ

レイカさんにおすすめの自殺スポットは、東京都××区××‐××です。
20××年9月24日PM4:30
そこから飛び降りて下さい。
全てこのサイトの言うとおりにすればレイカさんの魂は救われるでしょう。
〜極上の死をアナタに〜

〔実行〕←

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「……」

ゆっくりと、時間が流れている気がした。

発する言葉も見つからず、流す涙も見つからず、私はただそこに立っていた。

目を細めて下を見る。視界いっぱいに広がるのは人の群れ。みんな忙しそうに、何か目的を持って歩いているのが分かった。

家に帰るのか、塾へ向かうのか、はたまた誰かと遊びに行くのか……


そこでふと思った。

あぁ、私には何も無い。

何も、無いんだ……