「信じられない・・・じゃあいいよ、こんな家こっちから願い下げだよ」
言い放って、あたしは自室へと入った。
押入れからキャリーケースを出す。
そしてその中に、ありったけの服を詰め込んだ。
高い服、気に入ってる服・・・

そんなあたしを見かねたのか、ズーがあたしの元へやってきた。
あたしが飼ってる犬。正式にはアイツの犬だけど。

「出て行けだってさ、ズーともお別れ」

頭をなでれば嬉しそうに尻尾を振った。

キャリーケースを引っ張って、バッグを四つ持って。
リビングで最後のアイツとの会話。

「じゃあね」

最後の、強がり。

部屋を出てエレベーターに乗ってやっと気がついた状況。

ありえない、何この状況。
あたしはアイツと付き合ってすぐにアイツん家に転がり込んだ。
元に住んでた家もとっくに追っ払っちゃったし、本気であたしの住む家がない。