「シャネルの、5番……」

「あら、知っているの?」


ツバキはゆったりと微笑んだ。


「この香り、春樹が好きだったものよね」

「春樹のことを、知っているんですか」

「ええ、もちろん」


一呼吸置いて、ツバキは告げた。


「かつての恋人だもの」