「そして、極めつけに貴方の足を引っ張った」


春樹は、恵理夜が想像以上に見えない傷を負っているのを悟った。


「……いくつか、考えなくてはいけないことがあるわね」


恵理夜は、弱気になった自分を奮い立たせるかのように言った。


「まずは、貴女がどのようにして消えたか、です」

「そう、部屋に何か仕掛けがあったのかしら」


春樹は、105号室――恵理夜の部屋の前で足を止めた。


「この部屋から、貴女は忽然と姿を消した」

「……入りましょ」


春樹は、言われたとおり恵理夜を抱えたまま鍵を開け、引き戸に手を掛けた。