「ちょっと、春樹っ」

「しっかりつかまってください。抱き上げます」

「自分で歩けるわ」

「お嬢様」


咎めるでもない響きで、ただ、春樹は恵理夜を呼んだ。

懇願するような瞳に逆らえず、恵理夜は黙った。


ただ、その唇は血が出るのではないかというほど噛み締められていた。


「手当てを致しましょう」