「ですが、大丈夫です」


恵理夜の目を真っ直ぐに見つめながら、春樹は言った。

その目は、恵理夜の不安を見抜いている目だった。


「私が、貴女をお守りします」


――その時、突き上げるように船が揺れた。

よろめいた恵理夜の体を、春樹がとっさに抱きとめる。


「天気は最高によいのですが、海は荒れているようですね」

「……お手洗いに、行ってくるわ」


恵理夜は、口元を抑えながら言った。


「大丈夫、ですか」

「ええ。少し、一人にして」


そう言って恵理夜は、頼りない足取りで春樹から離れた。