「山下くん……あたしこのままじゃ鼻血ばっかり出して、血がなくなっちゃう!」



「なんで」



「山下くんがキュンキュンさせるからだよっ!」



今日も明日も明後日も、山下くんがいるだけで、キラキラした世界が広がるんだろうな。片思いとは違う新しい世界が見えるんだろうな。



「もしもの時には輸血してね?」



「アンタO型でしょ。血液型違うから無理」



「え~そんなぁ……待って。なんであたしの血液型知ってるの?」



「……あ」



「ねぇ、なんで!?」



「なんでもねぇよ。じゃあな」



そう言った山下くんとは、階段で強制お別れとなってしまった。このことを休み時間に夏生へ言ったところ、以前、山下くんが聞いていたみたいなのだ。



「アンタのこと知りたいって言ってきてさ」



「嘘!?いついつ!?」



「さぁ?いつだったかな」



妙に曖昧にする夏生。でも、それって山下くんがあたしのことを、気にしてるの知ってたってことだよね?



そして実は両思いだった?



「起立、礼!」



放課後、終礼を終えるとダッシュで鞄に教科書を詰め込むあたし。



「夏生!また明日ねっ」



「はいよ」



夏生に別れを告げて、放課後は早く帰宅してしまう愛しのダーリンの元へ急ぐ。



1分1秒でも山下くんの姿を見ていたくて、傍に居たくて、今日あったことを話したくて。そんなことを思い浮かべながら、夕日が差し込む廊下をかけていくあたしだった。





【完】