「あの、あたしからいいですか?」
葉月の目の前に立ったあたし。葉月は少し、驚いた表情を見せる。
「山下くんのことは狙わないでね。もうあたしのだから」
その途端、ふっと笑った葉月。山下くんも鼻で笑った。
「滝沢……さんよね?安心して。あたしがココに来てるのは、アイツに会うためだから」
そう言って、葉月が指さしたのは……え?あっ、阿木くん!?
「中学の時に、阿木先輩と葉月先輩付き合ってたんだよ。で、別れたけどヨリを戻したってわけ」
「え?待って。じゃあ、阿木くんって山下くんと同じ中学?空手部のキャプテンだったの!?」
「あぁ、そうだよ」
そんな話一言もしなかったよね?そんなことを考えていると、阿木くんが近づいてきた。
「雅、来たんだ」
「うん。お昼前に来てたんだ」
ちょ、待って!
「阿木くん、彼女の名前を間違えるなんて可哀相だよ!」
「は?」
「名前、葉月でしょ?」
あたしは葉月を見てそう尋ねた。
「たしかに名前だけど、苗字だよ。あたし、葉月雅だから」
う、嘘。てっきり名前かと思ったし、山下くんが唯一名前で呼ぶ女なんだなぁって嫉妬してたのに。


