「そんなことがあったの」



「うぅっ、夏生~」



「アンタもバカなことしたわね」



教室に戻ると、接客担当の交代時間だったらしく、隅でエプロンを外す夏生に飛びついたあたし。



最初は何事?と解らずにいた夏生だったけど、あたしの噛み噛みな言葉を理解してくれた。



クラスメートもあたしに何かあったと察して、接客はもう少ししてから入りなとか、奥で休めよなんて、優しい言葉をかけてくれた。



「どうしよ~。もうこれから山下くんと話せない~うぅっ」



「たしかに、ど派手にやらかしたみたいだしね」



奥の部屋(休憩室)で、夏生はテーブルにあったキャンディを口へ運んでそう言った。



「あたしの毎日のエネルギーの源が……」



「自分でそうしたくせに」



そうだけど……こんなにど派手にしちゃうとは思いもしなかったし。



「接客どうする?休む?」



「する!うじうじしてても変わらないし、みんなも疲れてるだろうし接客するよ!」



「そうね。それに、その腫れぼったい目もきっと笑い者だね」



ほら、とエプロンと猫耳を差し出した夏生。あたしはほっぺを叩き、気合を入れて接客に臨んだのだった。