「食ってる奴手を挙げろー。んー?ここら辺から匂うな」
少しずつあたしの席の方へ近づく先生。やめて~!悪いのはあたしだけど、今回ばかりは勘弁してよぉ!先生に捕まったら、昼休みがなくなっちゃうよ!
「ん?滝沢、お前か?」
つ、い、に、バレてしまった!?
「はい」
すると、あたしじゃない声が聞こえた。
「滝沢さんじゃありません。お腹が空き過ぎで、あたしが早弁してました」
その正体は……な、夏生!?
「ひ、東田だったのか?め、珍しいな」
成績優秀の夏生の発言に、困惑している様子の先生。もちろんあたしもだけど。誰もがあたしが早弁してたって気づいてたのに。
「すみません。次は気をつけますので」
「あ、あぁ」
同時に授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り、先生はまだ首を傾げながら教室を後にした。そんな先生をよそに、あたしは夏生の元へ急いだ。
「夏生!さっきの……」
「おバカ!アンタ、バレるに決まってんでしょ。こっちが焦ったっての」
「は、はい……」
「今日は特別。山下くんとの約束のためよ。次はないからね」
「夏生ありがとう!」
「分かったから、早く行きな」