「今すぐアンタを引き離したいけど、また後からにするわ!ひと時の幸せを楽しみなさい?」
綾ガキを山下くんから引き離す力がないことは分かっていたから、そう言って2人の前から立ち去った。
「ほら、無理して走ったから、気持ち悪くなってんでしょ」
「だって、山下くんの隣……ぐぇ、気持ち悪い~」
そして、夏生に付き添われてテントへ座り込んだ。そして、夏生の差し出してくれたスポーツドリンクを二口飲んだ。
「これじゃ競技は出れないね。沙良、アンタ何の種目に出るんだっけ?」
「障害物リレーと山下くんのための応援~」
「バカなこと言わないで。午後からの種目だし、誰かに頼んどくから」
面倒見のいい夏生さん、本当にあざっす。
「……にしても、あのヒロちゃん?って子。アンタと似過ぎ」
「山下くんへの愛は負けないもんね~」
「あーもう、話さなくていいわ。休んで」
それから午前中の種目が終わるまで、あたしはテントで夏生に面倒を見てもらっていた。
1年の短距離走に山下くんが出た時だけは、体調不良を封印して全力で応援した。おかげで山下くんは1位でゴールしたのだ!


