「山下く~ん!」
そしてあたしは、山下くんのところへ猛ダッシュした。ところが……。
「写真撮ってよ!」
「カッコ良かったよー!」
応援団の周りには、たくさんの人だかりが出来ていたのもちろん、山下くんの周りにも、女の姿がちらほら。
「株上がるの早いね……って沙良?」
「山下くんの隣はあたしのものだ!」
あたしは、人並みをかき分けて山下くんの元へ向かう。山下くんのカッコ良さに、今頃気づいた人達に負けるもんか!
「ヒロちゃ~ん♪」
この声は!聞き覚えのある声を耳にしつつ、山下くんの元へたどり着くと、山下くんの隣のポジションを取っていた人物がいた。
「綾ガキめ!そこを離れなさい!ほら、今日はお塾じゃないわけ!?」
「げ、おばさん!きっ、今日はお昼からなの!おばさんこそ一段と老けちゃって、ますますおばさん化してるね!」
セーラー服姿の綾ガキがははんっと笑いながらあたしを見た。
「これはね、山下くんの学ラン姿を妄想してたら眠れなくて、今日はちょっと調子が悪いのよ!そう、愛が足りないから、今のあたしには山下くんが必要なの!」
そこまで言った時に、少しだけ目眩がした。おっつ、こりゃヤバイ。山下くんの元で倒れるわけにはいかない!


