「よし!じゃああそこへ……ってえ?今……」



「花火見るんでしょ」



「ゆ、夢じゃない?」



あたふたするあたしを置いて、山下くんはスタスタと歩き始めた。やっと状況がつかめたあたしも、慌てて追いかけた。



「あ!あそこだね!空が煙ってるよっ」



橋の歩道へ着いて空を見上げると、夜空に花火の煙が漂っていた。山下くんは……反応なし。シュンっと落ち込んでいると、



ぐう。



お腹が鳴った。あ、山下くんではなく、お恥ずかしいことにあたしのお腹が。ギャー!



「や、山下くん!ご飯にしよ!ほらっ、お弁当どうぞ!」



恥ずかしくてパニくったあたしは、唐揚げ弁当を1つ山下くんへ押しやった。



「……箸」



「あっ、はいっ」



どちらからともなく地べたに座ったあたし達。橋の端の方にいるが、橋にはちらほら人の姿がある。



夏生が言ってたように、ここって花火スポットなんだね。聞いててよかった♪



ドンッ



再び花火が上がった。大きな赤の大玉。心まで響いてくるこの音は、毎年ビックリするけど嫌いじゃない。



「食わないの?」



山下くんの声にハッとして、お弁当を開けた。