「触らないでくれるかしら。アルコール消毒もしていない、バイ菌だらけの手なんて見るのも嫌なのに、触れるなんておこがましいわよ、ねえ、家畜」


「……」


「本棚をあげてちょうだい。少しでいいのよ。あなたみたいな脆弱でミンチになるしか脳ない家畜でもできる力仕事よ?幸い、棚は倒れきっていないわ。さあ、ささっとしなさい。ミジンコと呼ばれたいの?」


「……」


ところどころに突っかかるものを感じたが、織部は棚を持ち上げようとした。


んー、と奥歯を噛み締める。本はほとんど出ていたため、案外浮き上がる。僅かながらの隙間ができたことで少女は這い出た。