もう帰るっ、と乱暴に席を立ち、平家物語一式を本棚に戻し始めた。


鼻息荒く、八つ当たりにも近い動作で本をしまっていく。


――だから、気づかなかった。


本棚がぐらついているのに。


もともと古い作りの棚なためか、脚に寿命が来たらしい。ぎぃと軋む本棚だが。


「くっそー、あんのアホ教師!明日の朝、扉に黒板消しトラップをしかけてやる!」


出てしまう独り言にかきけされた。


よたつく本棚。倒れるであろう一歩前。


「あ?」


織部のケータイが鳴った。


メールだろうと本棚から離れた途端。


――大きな、耳をつんざく音がした。


たまらず向けば、自分が先ほどいた場所に本棚が倒れて、雪崩のように本が散らばっていた。