「……」


腹から伸びていた異物。


「ヒィ……ハ、ハ……クソ、あ……ハッ」


背後の気配は薄っぺらくとも、耳障りな声は変わらなかった。


魔物が、イリイアの腹部を素手で貫いた。



甘かった。
死んだと見誤ったイリイアの誤算でしかなかったが。


「な、ん……!」


魔物とて誤算があった。


――冷たい。


腹部を貫いた素手が冷たく感じられた。


温もりがない。抜いてみれば、いくつもの“管”が手に絡み付いていた。


溢れる血の量も少なく、ぽっかりと空いた腹部から“無機質”が顔を出す。