「……」
腹から伸びていた異物。
「ヒィ……ハ、ハ……クソ、あ……ハッ」
背後の気配は薄っぺらくとも、耳障りな声は変わらなかった。
魔物が、イリイアの腹部を素手で貫いた。
甘かった。
死んだと見誤ったイリイアの誤算でしかなかったが。
「な、ん……!」
魔物とて誤算があった。
――冷たい。
腹部を貫いた素手が冷たく感じられた。
温もりがない。抜いてみれば、いくつもの“管”が手に絡み付いていた。
溢れる血の量も少なく、ぽっかりと空いた腹部から“無機質”が顔を出す。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…