(一)


全盲たるイリイア・アンナは、ヴァチカンの洗礼施行者(バプティスタ)であった。


故に彼女は悪を嫌い、神の代わりに悪の処刑に日々いそしんでいる。


今日もまた例外ではなかった。


深い森。昼間というのに明かりがあまり入ってこず、緑ではなく灰色になる森を彼女は歩いていた。