『A』

 
       ◇
………

ここは、『A』事務所2階の客間。

時刻はまだ夜の7時だというのに、電気もついておらず、静まり返っている。

だが、人がいないというわけではない。

美柑、石姫、奈津子の三人は、息を潜めて床にはいつくばっていた。

「美柑…大丈夫!?」

「うん、これくらい…かすり傷だよ」

美柑の肩口から、鮮血が滴り落ちる。

つい先程のことだ…、彼女達は、何者かから狙撃を受けていた。

奈津子を襲う凶弾に一早く気付いた美柑は、彼女を庇うように押し倒し、その時肩に被弾したのだ。

「………」
(…私に気配を悟らせないなんて…
なかなかの使い手じゃない?)

突然の狙撃…、咄嗟に電気を消し姿勢を低くしたが、このままではジリ貧だ。

狙撃手の位置はわかっている、タダで怪我をする美柑ではない。

弾道と被弾角度から、狙撃手の位置は割り出しているのだ…が、おそらく敵は一人ではない。

存在は確認していないが、スナイパーが簡単に自分の居場所を報せて来たのだ、かなり高い確率で伏兵がいるとみていいだろう。

自分を的として差し出し、仲間に始末して貰う。

これは、スナイパーが複数で行動する際の常套手段で、一流のスナイパーである美柑にとって、当然警戒すべきものであった。