大切なこと



翔が手術を受けている間、あたしは出会った日のことを思い出してた。

あの日はずっと残暑が厳しかったのにめずらしく寒くて、あたしは友達の付き添いで文化祭についていった。

小学校の同級生がやってるクラスに入ったあたし達に、受付をやっていた翔は人なつっこい笑顔で話しかけてきたね。

---いくつ?

---15。

---中3?

---そーだょ!

---一緒だなッ!!

当たり前でしょ。
元同級生に会いに来たんだから。
でもね、翔の笑顔を見たとき確かに胸がキュンとしたんだよ。
クラスはめちゃくちゃ盛り上がってたけど、あたしは翔のことが気になってしょうがなかったの。
目があったら嬉しくて。
話しかけられたらもっと嬉しくて。

あたし、確実に恋をしてた。

名前も知らなかったのに変だよね。

でも思ったの。

あたし、この人のこと…
好きだって。

アドレスも名前も聞けずにあたし達はクラスを出た。

また、会いたいと思った。
中学からある私立高校を受験したいと言ったあたしは当然親や先生に反対された。

でもあたしはそれを押し切って翔の私立を受験した。

必死に勉強して、あたしは合格した。

入学式、運良くあたしをみつけた翔はほんとに驚いてたね。
引かれたかと思った。
普通なら確実に引かれたと思う。
あなたを追って受験しました!!なんて。
でも翔は言ったよね。
---ずっと、また会いたいと思ってたんだ。
あたし、本気で嬉しかったの。
一目惚れで始まる恋なんておかしいと思ってた。
でも、おかしい恋なんてないんだね。
どの恋も、ちゃんと恋だもん。
おかしくなんかない。
いつだって本気で恋してるんだから。

あたし、この時の気持ち忘れちゃってたよ。

翔以外見えなかったのに幸せに慣れちゃってた。