次に目を開いたのは、三日後の昼。
見慣れない天井が、ぼんやりと見える。
何度か瞬きを繰り返していると、衣擦れの音が耳に届いた。
「あ、目が覚めた?」
無邪気な笑顔を向けてくる、知らない人。
私より幾分か年上に見える。
「君、道端で倒れてたんだよ?大丈夫?」
「…………」
私は起き上がって、周りを見た。
どこかの一室らしい。
「………。聞いてる?」
少し低い声で言われて、私ははっと彼を見る。
「あ、大丈夫……」
ここはどこだろう。
地図なんて持ってないから、どこかは分からない。
「ここは…」
「江戸の試衛館だよ」
試衛館……って、道場?
私は布団から出て、外を見た。
そういえば……私、家出みたいな事したのよね。
「君、何で倒れてたの?」
後ろからそう聞かれて、私は前を向いたまま口を開く。


