眉を下げて、微笑んで。
悲しそうな、目をしている。
「………知ってる」
「うん」
よしよしと頭を撫でる。
悲しい。苦しい。
……寂しい。
「凜は、一人でも大丈夫だよな」
言おうとして、口を閉ざした。
「……よしっ、帰るか!」
――何でそんなに笑ってるの。
何で明るくいられるの。
何で……何で、行っちゃうのよ。
「帰らない」
「は?」
ぽかんとした表情で振り向いた龍飛を睨みながら、私は再び口を開く。
「私は帰らない!!龍飛なんか、勝手にどこにでも行けばいいのよっ」
「っおい、凜――!!」
龍飛の声も聞こえない振りをして、私は全速力で走っていた。
京から、江戸まで。
普通の人……まして子供なら長い時間が掛かる道程を、私は一日で辿り着けた。
来たのはいいが、流石に疲れて道端で意識を失ってしまった。


