瞬間、私は胸が締め付けられるような感覚に陥ったのを覚えている。
龍飛は、団子を食べる私をすごく優しい目で見ていたんだ。
…途端に、悲しくなった。
龍飛が…龍飛が、行ってしまう――
そう、実感してしまったから。
「帰ろう」
最後の一口を飲み込んで、私は立ち上がった。
終始無言のまま、私達は甘味処を出る。
「…凜」
「………」
「凜」
優しい呼び掛け。
この声で呼ばれるのも、後少し。
「寄り道しようか」
龍飛は今日"あの話"をしたいのだと思う。
だけど、今は龍飛とずっといたくて……私は俯いたまま頷いた。
「夜桜……」
龍飛に連れられて来たのは、大きな桜の木がある場所。
私の―――お母様がいる場所。
「凜。俺……もう直ぐ、遠くへ行くんだ」
桜に見入っている内に、龍飛はそう言った。
ゆっくりと視線をずらし、龍飛の目を見る。


