「あのな、凜」

「何よ」


席に座るなり眉を下げて口を開く龍飛。

嫌な予感しかしない。


「大事な話があるんだ」


真剣で、悲しそうで、申し訳なさそうな………複雑な表情だった。

聞きたくない。

どんな話をされるのか、私は知っていた。


偶然、松平様と話しているのを聞いてしまっていたから。

だから……

はっきりと、本人の口から聞きたくない。


「俺、もう直ぐ「御手洗団子三十本下さい」

「あいよっ」


店員にそう告げて、私は外を眺める。

夕日が、とても綺麗だった。

そんな夕日と裏腹に、私の心の中はどろどろしている。


私が龍飛の話を遮ってから、龍飛は口を閉ざしたままだった。

私が聞きたくない事が分かったのかもしれない。


「お待ちっ」


運ばれて来た団子を一人で食べ進めながら、無言の龍飛を見てみた。