桜風月




「馬鹿凜、心配させやがって……!!」

「………。ごめんなさい」


私が素直に謝ると、龍飛は「いいよ」と頭を撫でてくれた。

その手は、すごく温かかった。


「松平様にも謝って来い」

「うん…」


龍飛に背中を押されて、私は松平様のいる部屋へ向かう。

きっと……怒って、いるだろうな。


「松平様……凜です」

「入れ」


失礼しますと入り、私は俯いたまま松平様の言葉を待った。


「姫、よく帰ってきてくれたな」


え、と顔を上げる。

意外にも、松平様は笑顔でそう言ってくれた。


「ごめん……なさい…松平様」

「謝らなくてもいい。凜が帰って来てくれて、私は嬉しいのだよ」


そう言ってくれて、嬉しくて。

私は泣きながら松平様に抱き着いた。


「一人で怖かっただろう」

「大丈夫ですっ…」


松平様は私にとってお父様のような存在で。

抱き締め返してくれたのが、嬉しかった。