由希の言葉に、祥多は力強く頷いた。


「ふふ。これからデート? 花音ちゃんの格好、いつも以上に可愛いわ」


 由希は花音の方に視線を移す。


「めーいっぱいお洒落して来ましたっ! 祥ちゃんとこれから桜木公園に行って来ます」

「桜木公園なら、ちょうど桜が咲き始めの頃ね」

「満開じゃないのが少し残念ですけど」


 にっこりと笑う花音の隣で、祥多は照れ臭そうに俯いていた。


 何とも初々しい我が子の反応を、祥多の母は楽しんで見ている。

 18になって初めてデートをする祥多。どんなデートになるのか、祥多の母は尾行して見てみたい気持ちを抑える。


 そんなところへやって来たのが、直樹と美香子だった。


「タータン、退院おめでとう」

「おめでとう、祥多君!」

「来てくれたのか。サンキュ」

「珍しいね? 二人で来るなんて」


 花音の言葉に、二人は顔を見合わせ、同時に言った。


「「内緒」」

「えぇ? 気になるな~」


 何やら企んでいる様子の二人を見つめていると、花音の視線から逃れるように二人は目を逸らした。

 怪しい二人を更に追いつめるように見つめていると、直樹が気づいたように口を開いた。


「ノンノン? なぁに、その可愛い格好。この後どっか出かけんの?」

「ん。桜木公園まで」

「まさか早河って奴とデートじゃないでしょうね?!」

「まさか。祥ちゃんと桜見に行こうねって約束してたの」

「………、へ?」