「…ッ!」

僕は無意識に恭弥を突き飛ばした。

怖い。怖いよ。

僕と恭弥の距離が遠くなる。


「ごめんなさい。」


僕は謝ったけど謝りきれない罪悪感が残る。どうしたんだろう。

恭弥が怖い。本能的にそう感じてしまう。

普段なら普通に出来たのに。目を合わせて話す事すら出来ない。

「美海が謝る必要はない。」


そう言ったときの恭弥の顔は忘れられない。

ずっと一緒にいたのに、あんな顔、初めて見た。悲しいのか辛いのか僕には読み取れない表情……。


しばらく沈黙が僕たちを支配した。


寂しいけど寂しくない。

辛いけど辛くない。

泣きたいけど泣けない。

そんな感情が僕の心を支配する。


「僕、帰るね。本当にごめんなさい。」

僕は恭弥にそう言い残して帰った。いつもなら恭弥が家まで送ってくれる道。
夜だから街灯の灯りだけを頼りに家まで帰る。こんなに寂しい道だっけ。

いつもより長く感じた帰り道が終わり、玄関のチャイムを鳴らす。