忘れかけていたあの痛み。

気絶するくらいの痛み。

怖くなるくらいの傷み。



僕は恭弥から少し離れた。嗚呼、やっぱり身体って正直なんだ。


「ごめんな。俺が人を殴って……悪かった。」


僕だって……。
治したいよ。この悪い癖。



「ねぇ…この癖ってどうしたら治るかな?僕…昔みたいになりたい。」


僕は数年ぶりに恭弥の目を見て話した。すると、恭弥は表情を一変。僕をまじまじと見た。



「俺を…責めてないのか?」

僕は首を縦に振った。


「うん。だって恭弥は何も悪くないもん。僕だってはやく男嫌い治したいし。じゃないとこれから先、男の人に失礼だしね。」



僕が軽く笑うと恭弥も笑った。久しぶりに見たよ。恭弥の笑顔。



「ありがとう。美海。そうだな…どいしたら異性とちゃんと絡めるか…か…。今はどんな感じ?」


「クラスのイツメンは男の子ばっかりだよ。みんないい人だし。でも、触れない。目を見て話せない。先輩には全く……。」


そう言ったら恭弥は顎に手を置いて考える仕草をした。



「微妙に重症だな。」



「微妙って……。まぁ、そうだけど…これってただ単に人見知りじゃないかな?」


「そうかもな。でも、女には触れるんだろ?」


僕は頷いた。

「うん。でも、ぎゅぅってしたりはあまり好きじゃないな。暑苦しいし。」


苦笑する僕。しばらく沈黙が僕たちを支配する。いきなり、恭弥が口を開いた。



「それは、ただ単に経験不足だろ。美海に足りないのは経験だ!経験だよ!」


ひらめいた!

って感じの恭弥。漫画とかだったら電球とかが頭の上にあるよね。