その理由は今日、母さんが僕をどこかに連れて行くから早く帰ってきなさいって言われたからだ。
学校から家まで約15分。僕は早歩きで家についた。
春と夏の境目の気温だから不快にはならない。
「ただいまー。」
僕は玄関を開けた。
シューズラックには知らない靴。誰かお客さん?
「あら、美海。早かったわね。」
母さんが少し驚いたような表情。
「だって母さんが早く帰れって言ったから、僕急いだんだよ。」
「また僕って言う。」
母さんは笑いながら僕を叱った。最近母さん、僕の一人称が気になるみたい。
「いいじゃん。別に。学校では僕って言ってないんだから。」
「それなら家でもちゃんとしなさいよ。」
「えー。僕がなんかしっくりするんだけど。」
僕はそう言ったら母さんは呆れた。
「はいはい、あ、そう言えば早く二階にあがりなさい。お客さんよ。」
僕はさっきの見慣れない靴を思い出した。あれって僕のお客さんだったんだ。でも誰だろう……。
「あ、うん。分かった。」
僕は母さんにそれだけだ言って自室がある二階に上がった。
「ごめんね。母さんと話してたから少し遅れちゃった。」
僕はドアを開けながらお客さんに言った。
でも、ドアの向こうにいた人は……
「久しぶり、美海。」
「う…そ…き、恭…弥…。」
僕はその場に崩れ落ちた。