駅前の小さな喫茶店。
目の前には一人の女が座っている。

俺はまずこの間の夜の非礼を詫びた。

どことなく落ち着かない様子で
「ううん、そんなことないよ」
とおまえは言った。

ここに着てから、一度も俺と目を合わせようとしない。

「元気、だったか?」
俺は訊いた。
目を伏せ、少しはにかんだように。

そういう表情に女は弱い。
あまり見せることのない一面に、
おやっと思うからだ。

「うん、元気だったわ」

思った通り、おまえから嬉しそうな笑みがこぼれた。

「本当に久しぶりね」

「ああ」

たわいもない話を2つ、3つしたところで、
俺は本題を切り出す。

「会えないか?」
真っ直ぐに女の目を見る。

突然の言葉に動揺したのだろう、
おまえの目が完全に泳いだ。

その口元が動く前に、もう一押しする。

「ここで待ってる」

そう言って待ち合わせ場所と時間、
俺の携帯番号を記したメモを差し出す。

「久々に会えたんだ、話さないか?」

「でも」

「会ってくれないか」

低く、訴えるように言う。