「亮二さん」
「兄さん」
そう言って、みんな俺を頼る。
それだけ認められた、ということなのかもしれない。
俺の指示なしでは、何も事が運ばないようになっていた。
どこにいても、何をしていても
昼夜を問わず携帯が鳴る。
「あの件のことで…」と。
あの夜もそうだった。
リサとの約束があったのに、
組の事務所から出られない。
仕方なく待ち合わせ場所に向かいながら、俺は連中に指示を出していた。
そろそろ、浩介や直人にも「仕事」を割り振らなきゃな…
そう思っていた時だ。
話に気をとられていて、
前から来る女に気付きもしなかった。
ドンッ
俺の右腕と
女の右肩が当たった。
「おっと、失礼」
普段の俺なら、こんなことはしない。
丁寧に詫びを入れる。
なんたって相手は得意な「女」なんだからな。
だが、この日はそうはしなかった。
とにかく急いでいた。
リサを待たせるとうるさくて、
後々面倒だったから。


