「兄さん、もうやめて。
子どもたちに手をあげないで!」

「どけよ」

俺をかばおうと足にしがみついたおふくろを蹴り飛ばし、あいつは俺の目の前までやってきた。

「亮二…
おまえのその目が大っ嫌いなんだよ」

そう言って首根っこをつかまれると同時に、
顔を何度も殴られた。

「兄さん!やめてっ」

それでも止めに入ったおふくろを
あいつは力いっぱい突き飛ばした。

「母さん!」

「藍子、あんな男と結婚してこの家を出て行ったくせに、よくノコノコ帰ってこれたもんだな」

そう言って、手を振り上げる。


兄貴と俺は、おふくろの楯となってかばった。
俺たちの背中に、何度もあいつの拳や蹴りが落ちてきた。

この男はどうかしてる。

狂ってる。

どうしてそこまで親父を憎む?

歯を食いしばって痛みに耐えた。

その時、おふくろは俺たちの胸の中で泣いていた。
手を合わせながら…


なぁ、おふくろ…
あんた、なんで俺をこんなふうに産んだんだよ?
親父そっくりにさ…

よくさ、言うじゃねぇか。
男は母親に似るって…
なんでだよ…

俺がこいつらに
死んだ親父を思い出させるんだ。

もし、もしだぜ…
俺がおふくろに似てたら
こんなに疎ましがられなかったのか?