「加瀬さん」
俺は向き直ると、深々と頭を下げた。

博子があなたを選んだ理由がわかりましたよ。

あなたは優しく、強い。

そして誰よりも博子にふさわしい男だ。

そんなあなたに嫉妬していた俺は、身の程知らずだ。

…今まで、

そんなあなたに苦しい想いをさせてしまったこと、

本当に…

本当に、申し訳ありませんでした。



俺は公園を出た。

次第に早足になる。


『今でも博子を愛していますか?』


あの人の言葉が、何度も耳にこだまする。


ああ、愛してる。
俺だってあいつを愛してる!

ずっと愛してた!
この身を焼き尽くすほどに!!


だが、それを口にすることはできない。

俺はヤクザだ。

どんなに抗っても、犯した罪は消えない。

そんな俺が、何の穢れもないあいつのことを
「愛してる」なんて、堂々と言えるわけがない!

加瀬さん、あなたのように…
真正面から胸を張って言えないんだよ、俺は…