俺は警察署をあとにした。
身を切るような冷たい風に、思わず体を縮ませる。
同時にどっと疲れが押し寄せるのがわかった。
面倒な人混みを避けるために、
俺は小さな公園を横切ることにした。
そうするには、もう一つ理由があった。
署を出た時から、誰かにつけられている気がしていたからだ。
警察か…
それとも林さんの指示か…
公園に脚を踏み入れたところで、
ふいに呼び止められた。
「新明、亮二さんですよね」と。
静かな声だった。
振り返るが、暗くて顔まではわからない。
ただ、圭条会の人間ではなさそうだ。
「所帯じみた女は願い下げだとか…
本当にそうでしょうか?」
ああ、こいつは警察関係者だ。
さっきの俺の話を聞いてやがったな…
「あんたは?」
その男は臆することなく、俺の前までやってきた。
甘いマスクが外灯の光に浮かび上がる。
「加瀬といいます」


