つむじ風。


それからすぐに警察から呼び出しがあった。

ここでゴネて行かないわけにはいかない。

あいつらは俺たちのどんな隙も見逃さない。
すぐに家宅捜索に持ち込みたがる。

数々の隠された犯罪をあぶりだすために。

俺もここが正念場だ。


安住という刑事が俺の前で愛想笑いをしながら挨拶をする。

ああ、あんたのことは知ってるよ。

3年前に事務所に乗り込んで来たじゃねぇか。
俺のかわいい弟分の一人をパクりやがった。

俺はふてくされた顔で、リサの売春斡旋に関しては無関係だと主張した。

警察が用意している切り札は、リサの件じゃない。

AGEHAの経営に関しては、契約書があるからな。

必ず、出る。
博子…加瀬博子の話が…

俺はさりげなく女の影をちらつかせた。

来るなら来いよ、安住さんよ。
俺ならもうとっくに覚悟はできてる。

思惑通り、安住は俺の言葉に食い付いてきた。
「それは加瀬博子さんのことですか?」と。

待ってましたとばかりに、
俺はとぼけたように応じる。

「加瀬?…ああ、あの女ね。
昔は葉山っつってたけどな」

「どういうご関係ですか」