「ところでリサは、元気でしたか?」
「ええ、あの威勢のよさは健在です」
「先生、どうかこの件、よろしくお願いします」
「もちろんですよ」
その時、顧問弁護士の携帯が鳴った。
「ちょっと失礼」と席を外したのも束の間、
すぐに血相を変えて戻って来た。
「新明さん!湊川さんが、あなたと県警の刑事の妻が深い仲だったと証言したそうです。それは本当ですか!」
「……」
何も言わない俺に、弁護士は頭を抱えた。
「ヤバイですよ…警察は必ずそこをついてくる」
リサ…
俺は固く目を閉じた。
「先生、お忙しいことを重々承知で、
もう一つお願いがあるのですが…」
弁護士の事務所をあとにすると、
俺はまっすぐに自宅マンションに向かった。
警察が圭条会を落とすチャンスとばかりに、俺を張ってるかもしれない。
さりげなくあたりを見回すが、それらしき人影も車も見当たらない。
今夜は冷える。
俺はふっと笑いがこみ上げてきた。
まさか今日、この歳で、「遺言状」を書くハメになるとはな…


