つむじ風。


「どこにも俺の本当の居場所なんてなかった。
気が付いた時には今の世界に入り込んでた」

もしあの時、おまえの後ろ姿に声をかけていたら、
俺の人生は変わってただろうか…

俺が心から安らげる場所…

それは…


ふいにおまえの手が俺の腕を掴んだ。

何かに怯えるように、
そしてしがみつくように。

「どうした?」

「ううん、別になんでもない」

「……」

博子。

このまま遠くに二人で行ってしまうか…

何もかも捨てて、俺と…

俺と一緒に、
あの頃の続きを、生き直さないか…

…なんてな
そんなこと無理だとわかっている。

でも、思うだけなら、
願うだけなら、いいだろ?

どうせ俺はおまえを手に入れることなんてできない。

だから、せめて心の中でだけなら、許されるだろ?

おまえと全てをやり直す夢を見ても…