車から降りると、俺は煙草を1本吸った。
徹夜明けの頭には、この1本が沁みる。
風もほとんどなく、海は穏やかだった。
そんな中おまえは一人、砂浜に下りて遠くを眺めている。
絵になりそうだ。
しばらくして、目の前が急に眩しくなる。
「こんなのかけてたら、海の色も空の色もわかんないじゃない」
と口を尖らせながら、おまえは俺のサングラスを取り上げた。
俺はもともと闇の世界に住む人間なんだ。
こういうのは眩しすぎるんだよ…
「別にいいだろ」
言い返す俺に、おまえはまた文句を言う。
「もっと、普段着っぽいのないの?」
スーツ姿の俺が気に入らないようだ。
ほんっとにおまえは、いちいちうるせぇやつだな。
呆れて笑ってしまう。
おまえが近くに小さな水族館を見つけてきた。
車に乗り込もうとする俺を引っ張って言った。
「歩いていこうよ、気持ちいいわよ」と。
勘弁してくれよ。
徹夜でフラフラなんだぜ、俺…
渋る俺に手招きしながら、
おまえは歩いていく。
なぁ、博子。
知らないやつが見たら、
俺たちは普通の恋人同士に見えるんだろうか。
勘のいいやつなら、
俺たちの微妙な距離に、違和感を感じるかもしれない。
俺たちのこの関係は、
一体いつまで続いていくんだろうな。
先がないことくらい、おまえも俺も…
十分すぎるほど、わかってるのにな。


