つむじ風。


「じゃあ、また連絡する」

「新明くん、今度はどこか違うところで会わない?」

バカか…
俺たちはただでさえ会うことが許されない立場なんだ。
バレたら最後、
おまえも、おまえの旦那ももう終わりなんだぞ!

「何を言ってんだ。俺たちは…!」

「わかってる!ちゃんとわかってるよ、自分が何を言ってるのかくらい」

「じゃあ、なんでそんなことを言うんだ?」

おまえの顔が辛そうに歪んだ。

なぁ、博子。
こんな俺のために、その心を痛めなくてもいい。

そんなに気を遣わなくてもいい。

俺なら大丈夫だ。

おまえが今日散々泣いてくれただろ?
その優しい気持ちだけで、十分だ…

「ごめんなさい」

また、そんな顔しやがって。
おまえの気持ちはよくわかってる…


「…ったく、どこ行きたいんだよ?」

…おまえと出掛けるのは、もう次で最後だろうな。

「じゃあ、海…」

「海?こんなに寒いのに泳ぐのかよ」

「またそうやって意地悪を言う!」

白い歯を見せながら、俺の肩を押す。

そうだ、その顔だ。
そうやって、笑っていろ。

これから俺といる時は、ずっと笑っていろ。

いつ俺たちの間に「最後」が来ても、
おかしくないんだからな…