つむじ風。


「亮二さん、着きましたよ」

その声に重たい瞼を開ける。

ウトウトしていた。
酒が入った時の徹夜は、きつい。

「年だな、俺も」

「なーに、言ってんすか」
運転席の浩介が笑う。

「31になっちまったよ。あっという間だな」

「男盛りじゃないですか」

俺は車から降りると、助手席の窓から浩介に向かって言った。

「今夜8時に林さんに事務所に来るように言われてる。
7時にはまたここに迎えにきてくれ」

「了解っす」

大丈夫かよ。

浩介のそんな軽い返事に苦笑いをしながら、俺はマンションのエントランスへ向かった。

昼前か…
一眠りできるな…

オートロックを開錠したとき、俺に足早に向かってくる人影があった。

とっさに身構える。

「亮二」

「…どうしてここに」

そこには厳しい顔つきの、兄貴が立っていた。