つむじ風。


「またな」

「新明くん」

「ん?」

「私じゃ何の役にも立ちそうにないけど、
…話を聞くくらいはできると思うから」

「……」

「だから、何かあったら…」

「何にもねぇよ。
それに下手にしゃべって警察にもれでもしたら、シャレになんねぇだろ」

「そんなこと…!」

「冗談だよ」

そんなに怒るなよ。

でも、おまえの口からそんなこと言わせるなんて、俺も落ちぶれたもんだな…

「心配すんなよ。
俺はそんなにヤワじゃない」

そう昔は…な。

おまえに会うようになってから、
だんだん自分が弱くなっていく。

張り詰めていたものが融けていく…

「気をつけて帰れよ」

「うん…新明くんも」

歩き出しても、何度もおまえは心配そうに振り返る。

おまえの遠ざかる後ろ姿が、
夜の闇に溶け込んでしまうまで俺はその場に佇んでいた。