つむじ風。


身体中が汗ばんでも、
石を投げることをやめられなかった。

この苦しい思いを、
どうにかして昇華したかった。

「もう、このあたりの石がなくなっちゃうわよ」

呆れたような声。

「望むところだ」

日も暮れて、川面が闇で見えなくなっても、
俺は石を投げ続けた。

「新明くん」

そんな様子が異様に映ったのだろう、
おまえは俺の腕をそっとつかんで、
「今日はもう、帰ろ…ね?」
と言った。

俺は息がきれている自分に、そこでやっと気がついた。

「…ああ、そうだな」


一緒に土手に上がる。

「今夜は旦那は帰ってくるのか?」

そう聞いてしまいそうだった。

毎回、こうだ。

気になって仕方ない。

聞いたところで、俺にはどうすることもできないんだがな。