1回、2回、3回…とそれは川面を切る。
ガキだな
そう思って見ていると、俺にもやれ、と言う。
「10回はいくからな」
そう豪語して石を投げたものの、3回しか水面を滑らなかった。
俺は上着を脱ぐと、もう一度石を握った。
何回やっても、石は10回も水面を切らない。
やってるうちに、だんだんムキになってしまった。
何もかも、思い通りにいかない…!
なぁ、博子、知ってるか?
俺が嫉妬してるってことを。
こうやって日が暮れると、
余計にそんな思いに苛まれる。
狂いそうなほどに、俺は嫉妬している。
石を投げる手に力が入る。
そう、おまえの旦那に、だ。
おまえが、その男を大切に思っていることも
俺との間で揺れていることもわかっている…!
俺の存在がおまえを苦しめていることだって、百も承知だ。
石は6回目で視界から消えた。
博子。
そいつが家に帰れば、おまえはその笑顔で出迎える。
おまえのその声が、そいつを包み込む。
教えてくれ…
そいつは、どんなふうにおまえの髪を撫でる?
その唇は、どんなふうにおまえの白い肌に触れる?
おまえのたまらず漏らす吐息を、
そいつはどんなふうに受け止める?
そして、博子。
おまえはその時、
一体何を思う…?


