博子…
おまえの選んだ男…
そして、俺にはない「正義」を持つ男…
ったく、とことん俺は勝手な男だ。
自分は違う女を抱いておきながら、
おまえが旦那に抱かれていると思うと、
苦しくなるくらい、この胸がざわめく。
「こわい顔してる」
そう言って、いつものようにおまえはベンチに腰かける。
そしてある物を2本差し出した。
俺が迷うことなくその1本に手を伸ばすと、
おまえは咄嗟に引っ込めた。
「ありがとう、でしょ?」
「ガキみたいなことすんなよ」
俺はおまえからミルクコーヒーを引ったくった。
久々に飲んだそれは甘くて切ない味がする。
それに触発されるように、
「何もかもが面倒になってきちまった…」
思わずこんな言葉が漏れた。
このコーヒーの味のように、おまえは何も変わっていない。
変わったのは俺だ。
いや、変わりすぎた。
今、この場所で、
おまえと同じ空気を吸うことですら、憚られる。
心配そうな顔で俺を見ていたおまえは、
「ねぇ見てて」と、川べりに立ち、石を一つ投げた。
励ますつもりなんだろう。


