あれは夏が終わる頃だった。
いつものように、中学校の校門前でおまえを待っていた時だ。

「お待たせ…」
と声がした方を振り返ると同時に、
強い風がグラウンドの砂を巻き上げて、吹きぬけた。

「きゃっ」
とおまえはスカートを押さえたが、
一瞬白い太ももが露わになる。

「…おっと」

俺も思わず声を上げてしまった。

その途端、おまえは鬼のような形相をして
「見たでしょ!」と睨んできた。

「見てねぇよ」

「嘘!じゃあなんで新明くんが声をあげるのよ!」

「なんでって言われてもよ…」

「知らない!」

今まで拗ねることはあっても、こんなふうに感情的に怒るのは初めてだった。

俺をほったらかしにして、さっさと歩いていく。

「待てよ」

全く応じない。

…んだよ、俺がスカートをめくったのならまだしも、風でめくれたんだろうが。


それから丸三日、
一言もおまえは口を利いてくれなかった。

俺が校門で待っていても、視界に入っていないかのように、目の前を通り過ぎていく。

この時ばかりは、さすがに俺も参った。