「先輩って…おまえ一度だってそんなふうに俺を呼んだことねぇだろ」

俺は笑った。

「新明先輩」

「……」

「これでいい?」

泣き笑いの、その顔にかかる髪を、おまえはしきりに撫でる。

「…なんだよ、そのとってつけたような言い方」

「そんなことないわよ」

「じゃあもう1回言ってみろよ」

「残念でした、もうダメよ」

「ケチくせぇな」

「どう?私に先輩って呼ばれた感想は」

「あるかよ、そんなの」

「照れちゃって」

「うるせぇよ」

顔をあげると真顔のおまえがいた。

「また、会える…よね?」


俺は小さく頷いた。

「…ああ」

そう答えてから、目を閉じ今度は大きく頷いた。

「会えるさ…」